物価連動国債
物価連動国債なるものがある。インフレ率に応じて元本が増える。しかも現在発行されている国債では、元本保証まであるので、デフレにおいてもマイナス金利にはならない。
ここで興味深い論文がある。
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/47803/1/ShogakuKenkyukaKiyo_82_Yuyama.pdf
デフレに備えた元本保証が付 されたことから、元本保証のためのプットオプションプレミアムが内包されていると考えら れる。
なるほどである。たしかにオプションであろう。
しかも要旨によれば、
今後、マイナスの期待インフレ率が予想される場合には、このオプション プレミアムの水準が急激に上昇し、BEI は事実上マイナスを示さないと考えられ、BEI によ り市場における期待インフレ率を把握する際には注意が必要である。
だから、よく金融レポートなどで、期待インフレ率を物価連動国債で調べようとするには困難が伴うと言える。
目からうろことはこういうことか。
情報の非対称性を学びたい方
情報の非対称性について抜群の資料がある。
契約理論をわかりやすくかつ詳しく解説している。
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エジプトの通貨暴落
このような記事が報道されていた。
兌換紙幣ならともかく、現代では兌換紙幣ではないので、ただの紙切れに中央銀行の信用力で成り立っている。そのため、変動相場制で他国通貨との交換をすることが一般的に行われている。ある意味、事実上の世界通貨になっている米ドルは為替リスクがなく米国民は自由に活動できる。
歴史を振り返ると、固定相場制とは非常に便利なもので、計算も楽だし、ドルペッグ制ならドルと交換できるならと信用さえ得れば、外国為替を気にする必要がない。
ところが、いいことづくめではない。
国際金融のトリレンマとは、アメリカの経済学者ロバート・マンデルが提唱した金融仮説の1つで、「自由な資本移動」と「為替相場の安定(固定相場制度)」、「独立した金融政策」のうち、同時に2つまでしか実現できないとする仮説です。
現在の世界において、トリレンマが成り立つ。為替を固定したいなら、金利をFRBと同じように動かす必要があるし、自由な資本移動を規制したいなら、変動為替を容認するしかない。
実に厄介である。一般に日本にとっては、変動相場制を導入しているので、あまり普段は考えないが、投機的な動きはしばしば見られる。自国通貨高を抑えたいので、円売りドル買い介入をしたい。円資金は日本銀行がいくらでも刷ることができるため、限界はないと考えられる。
参考
日本銀行における外国為替市場介入事務の概要 :日本銀行 Bank of Japan
ところが、新興国は、自国通貨安をなんとかしたい。そのため、米ドルなどの外貨を準備して、ドル売り自国通貨買いの介入を行なう。
ところが、保有する外貨には限度がある。自国通貨の信用がなくなり、自国通貨が暴落した時に、ドル売り介入すれば、投機筋は逆をして最終的に耐えられない。
そもそもは、市場価格からかけ離れたレートを設定している自体が無理がある。
やはりファンダメンタルズに為替は従うのである。
そもそも銀行のビジネスモデルは可能なのか
金融庁レポートを読んでいたら、こんな一節があった。
金利低下が継続する中、短期で調達し、中長期の貸出・証券運用を行うビジネスモデルの持続可能性
といったことや、
国債市場の低流動性や異例に低いタームプレミアムの中での金利変動リスク
過去との比較において特に高い伸びではないが、不動産向け貸出(アパートローンを含む)を含めた与信の集中リスク
である。
この異常なマイナス金利を続ける日銀の姿勢が変わらなければよかったが、トランプ相場で金利は上昇中である。
ということは、短期で借りたお金を長期で運用するというイールドカーブを利用した融資はしにくくなる。
いまイタリアの銀行の金融不安があるが、結局は付けは国民の税金である。ビジネスモデルを今変える時ではないか。