think big start small

経済学者を目指す大学院と証券アナリストのわらじをはくひと

1990年代後半の銀行への公的資金注入

日本では、長銀北海道拓殖銀行山一証券の破たんなど相次いで金融システムの混乱が生じた。

そこで、公的資金を投入し、資本増強をはかることになった。

 

その当時のことについて、興味深い文献があった。

景気判断・政策分析ディスカッション・ペーパー 1999 年 3 月の転換権付優先株式による公的資金注入方式 -

http://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/dp021.pdf

 

なお、この論文には議論があり、次のような追加事項がある。

http://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/dp021arena.pdf

 

なぜ、普通株でなく、普通優先株に転換できる優先株という、こんなに複雑なスキームをとったのか。論文にも述べられているように、おそらく、「官製格付け」を避けるため、あえて複雑に、しかも資本調達コストを下げるため、オプションプレミアムを駆使したのだと思われる。

 

資本主義においては、競争に敗れた企業は退場を迫り、新しい産業へ資金と労働力がつぎ込まれるべきである。一般論として。

金融機関も同様であるが、しかし、破たんさせると著しい社会的影響がある。リーマンショックがそのいい例であろう。

そこで、経営体制の見直しと監視をすることで、いったん優先株で注入し、さらに経営が悪ければ、普通株式に転換し、株主として影響を行使できるようにしたのである。

 

また、政府の政策上、事実上の国有企業になっていることもある。

チッソカネミ倉庫東京電力である。これらは公害や原発事故の被害者を救済するため、かといって、企業が破たんし賠償が確実に行われなわれかねない恐れがあったことから、公的資金を返済できるかどうかは別として、賠償金を公的資金として貸し付けている。

決算書類は興味深い、大幅な債務超過であるが、生きている。cash is king.を思わせる内容であった。チッソは、液晶がかつて好調であったそうであるが、金融支援として債務の利子について優遇を受け、カネミ倉庫は、国から政府備蓄米の保管を依頼され、事実上、救済を行なわれているし、東京電力に関しては、巨額すぎてつぶせないし、原発事故の収束や補償、さらに廃炉費用などもめにもめている。

もはやこれらは、経営権が云々というより、政治的課題である。