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think big start small

経済学者を目指す大学院と証券アナリストのわらじをはくひと

株式会社になった? 生命保険会社はどうあるべきか

生命保険会社といえば、相互会社といって、保険契約者がお金を出し合い、設立された。日本で第一号が第一生命である。

保険は明治時代に西洋からもたらされ、リスクを負う人として、危険請負人などと呼ばれた。そして、統計学の発展に伴い、アクチュアリーという保険数理人が計算する保険料を基に年齢やリスクに応じて掛け金を支払うものとされた。そして、なにかあれば(これを保険事故といい、病気や死亡、高齢、障害、火災、地震などによる損害の発生のことを指す)保険金を支払うものである。戦後、大きく国民に浸透し、保険業界は、保険のおばちゃん(販売員のGNP、義理人情プレゼント)によって、職場に入ることになったほか、生命保険料控除などの税金優遇も行われた。(今でも、団体保険といった割安な代わりに勤務先の会社を通じて申し込む、販売コストの抑えた金融商品がある。)

 

バブルでは、セイホと外国で呼ばれるほど、土地と株式の含み益で、海外に投資していた。そして、養老保険といった長期の保険で高利回りを長年にわたり約束するというすさまじい時代があった。

ところが、である。バブル崩壊後、逆ザヤと呼ばれる、運用益の赤字が続いた。一方で、生命保険に新たに加入するひとには大幅に低い利回りを約束し、そこから生まれる利益で、逆ザヤを補てんしていた。また、1990年代後半になると金融危機が起き、いくつかの生命保険会社が破たんした。そして金融ビッグバンとよばれる規制緩和で、ひらがな生命や外資系保険の参入、いわゆる第3分野のがん保険の解禁などが行われた。またネット生命の誕生、付加保険料(つまり保険会社の手数料)の公開、銀行窓販などのビジネス環境の変化もあった。現在では、マイナス金利という新たな時代が到来し、また厳しい生命保険業界にさらなる圧力になっている。

 

そこで、縮小する日本のマーケットから海外の保険会社の買収を通じて、規模拡大が目指された。このとき、言われたのが、日本の契約者のお金を会社の成長のためにつぎ込むのかという批判である。そのため、数年も前の話になるが、第一生命が株式会社になり、これまた日本の第一号の上場をしたのである。

 

上場にあたっては、収益の貢献度合いに応じて、つまり保険料を多くおさめ、しかも低金利でしか受け取れない保険のひとほど、株式と端数は現金で支払われた。ここに、日本最大級の株式会社の誕生である。

この計算方法はアクチュアリーしかわからないが(相当こき使われたと嘆いていたが笑)、おそらくなんらかの現在価値を計算したと思われ、株式は上場後すぐに売却できたため、事実上の保険料の還付が行われた。

 

 ここで、株式会社の生命保険会社は、株主の利益を追求すべきか、保険契約者の利益を追求すべきか悩ましい問題に直面する。

しかも、従来の契約者は株主でもあるのである。

株主の利益を追求するならば、海外の生命保険会社の買収は正当化することができるかもしれない。

かといって、過去の生命保険契約者の契約はまだまだ長期にわたり続き、保険契約者の利益を損ねる、たとえばM&Aで失敗し、経営危機になるなどの事態になったらどうするのであろうか。

ちなみに、相互会社から株主会社になった例はこのあとは続いていない。このような利害相反ともいうべきことがあってかわからないが、難しい問題である。

 

注、現在では逆ザヤの発生を防ぐためALM、アセット・ライアビリティ・マネジメント (Asset Liability Management)と呼ばれるリスク管理が行われている。