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think big start small

経済学者を目指す大学院と証券アナリストのわらじをはくひと

常識を疑う確かな力

東京大学の学長が入学式で話されたことをご紹介します。

詳しくは↓

平成19年度入学式(学部)総長式辞 | 東京大学

私が皆さんに贈るメッセージは、「常識を疑う確かな力」を養ってほしいということです。
 常識とは、このように考えこのように振舞うのが当然だと、多くの人々が共有する思考や行動の型のことです。社会には多くの常識が存在します。常識に従って行動することは、1つ1つの局面ごとにあらゆる事情を勘案して判断するのに比べれば、はるかに楽で便利なのです。ですから、多くの人々は常識に従って行動します。
  しかし、常識が常に正しいとは限りません。中には、不合理なこと、事実に反すること、人の自由を縛ることなども含まれています。不合理であるのに、権力や権威に誘導されて信じ込まされているといったこともあります。また、かつては合理的だったのに、時代や状況が変化したために不合理になるということもあります。しかし、たとえ不合理でも、疑われない常識はそのまま生き残ってしまいます。誤った常識を覆すためには、まず常識を疑うことが不可欠なのです。
  学問の世界にも常識は存在します。皆さんが大学に入学して最初に教えられることは、それぞれの学問分野の基礎や土台となる部分です。その学問分野のいわば常識に相当します。そして、学問発展の歴史は、学問の根底にある常識を疑い、覆し、新たな常識を作り出してきた歴史でもあるのです。

 皆さんもご存知の、ガリレオの実験を例として、この歴史について説明しましょう。
 ピサの斜塔から2つの球を落とす実験によって、ガリレオが挑戦したのは、「重い物ほど速く落ちる」という当時の常識でした。「重い物ほど速く落ちる」というこの命題は、アリストテレスによって権威づけられたものであり、かつ羽毛や紙切れと石の落下速度を比べてみるなら、私たちの日常的な感覚にも合致しています。ですから、当時の人々にとっては自明の前提だったのです。
 ガリレオはこの常識の怪しさを分かりやすく示すために、大きさと形が同じ鉄の球と木の球を落とし、地面に落ちる音が1度しか聞こえないことから、重さが異なっても同時に落下することを証明しました。人間の日常感覚と古代以来の権威に基礎づけられた常識は、こうして疑われ、新たな知に取って代わられることになったのです。このガリレオの実験は教科書にも取り上げられ、多くの子供に実験の意義を教えてきました。私も小学校の頃この話を知り、強く脳裏に刻み込まれました。もしかすると、私が自然科学の道を志すきっかけの一つになっていたのかもしれません。
  ところで、大きな歴史的意義を持つガリレオの実験ですが、今日ではその妥当性に限界があったことが明らかになっています。ガリレオの時代には、空気が物体の運動に及ぼす作用について、科学的な認識はほとんどありませんでした。ですから、古典力学の単純明快な設定で実験の意味を解釈することができたのです。しかし、現在の科学は、空気中では、鉄と木は同時には落下しないことを知っています。空気中を運動する物体は、空気抵抗を受けるからです。軽い木の球は、相対的に大きな空気抵抗を受けるため、鉄の球ほどに加速できません。ガリレオの時代には実験の精度が低かったため、同時に落ちたと判断されてしまったのでしょう。現在の精度で実験すれば、鉄の球は木の球より明らかに先に地面に落ちることが分かります。
  このように、古い常識が疑われて新たな常識が生み出され、その新たな常識が疑われてさらに新たな常識が生み出されるということを、人類は学問の世界において反復してきました。これからも、反復を繰り返していくことでしょう。それは永遠に続く知の革新過程なのです。
 

 

 ちょっと長いですが、東京大学のHPより引用させていただきました。

常識というものはそれに従うと確かに楽ですが、これが真実を見失ってしまう。これに必要なことが「常識を疑う確かな力」なのです。

科学の分野では実験によって、さまざまは仮説、学説が生まれ、そして淘汰され、その中でも生き残っているものがあります。でもカール・ポパーの説によれば、科学である限り、反証可能性をもっているのですから、いつ否定されてもおかしくありません。

 

経済、とくに株式市場においても定説があります。たとえば、ゴールデンクロスがでると買いのシグナルだというテクニカリストがいます。

実際、簡単に仮説を証明しようとすると、株価のデータをダウンロードして、ゴールデンクロスの買いシグナルが出ると、買いをしてみたとすると、損失のほうが多いことが知られています。

確かに、多くの人が、「常識」として、ゴールデンクロスでは買いと思っているため、ゴールデンクロスになると注文が入り、確かに一時的には上がることもあります。しかし、中長期的に見ると意味がないことが多いです。ただ、株価という市場の評価が正しいとも限りません。業績がいいのに、安値で放置されていることもあります。しかも、ずっと安値で放置されているので、買いもなかなか入らず長期低迷をしている株式も多い。だから、バリュー株投資は儲かるという「常識」もまた使えないのです。