経済学者を目指すブログ
私の最大のテーマは、「会社はだれのためにあるべきか」である。
その考えたアイディアがあれば書きたいが、ただ読書の感想にしかならないかもしれない。
このテーマは大学生時代や社会人になってからも、会社の姿勢に疑問を抱き、考えていたことである。これを再起させてくれたのは、とある日経の記事と以下のSBI証券のアナリストレポートである。
SBI証券(旧SBIイー・トレード証券)-オンライントレードで株式・投資信託・債券を-
「債務超過でも自社株買い」は優良企業の宝庫!?
2016/09/14
投資調査部 榮 聡7/5付日経新聞に米国には「債務超過でも自社株買い」をする企業があるとの記事が載りましたが、「自社株買いをしたから債務超過になった」というのが実態で、実はこれらは優良企業の宝庫と考えられます。例えば、自社株買いに熱心なことで有名な自動車部品販売のオートゾーンの株価は過去10年で7倍、2000年初からでは28倍になっています。そこで今回は、自社株買いと債務超過の関係をご説明し、自社株買いで債務超過になった優良企業をご紹介いたします。米国株式市場はFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げの思惑から調整地合いとなっていますが、このような優良企業にエントリーするチャンスではないでしょうか。
図表1:注目銘柄リスト
銘柄 株価 (9/13) 52週高値 52週安値 ドミノピザ(DPZ) 149.66ドル 151.20ドル 100.56ドル オートゾーン(AZO) 744.15ドル 819.54ドル 681.01ドル ガートナー(IT) 89.19ドル 103.00ドル 77.80ドル マリオットインターナショナル(MAR) 68.41ドル 79.88ドル 56.43ドル マスココーポレーション(MAS) 33.03ドル 37.37ドル 23.10ドル
「債務超過でも自社株買い」とは?
7/5付日本経済新聞の投資情報面「一目均衡」に「債務超過でも自社株買い」との記事が載りました。財務が不健全な状態である「債務超過」と、財務に余裕があるときにする「自社株買い」では普通は結び付かないはずなのに・・・という内容です。
実は「自社株買いをしたから債務超過になった」、「債務超過になるまで自社株買いをする企業がある」というのが実態です。これについて説明します。
米国では、債務超過の企業に2種類あります。
(1) 業績が悪く赤字が嵩んだために株主資本が毀損していって債務超過になった企業です。これは日本でも見かける債務超過のパターンです。
(2) もう一つは、業績好調が続いて自社株買いを続けたことにより株主資本がマイナス、つまり、債務超過になったという会社です。これが今回取り上げるケースです。
(2)について、もう少し説明しましょう。
まず、「債務超過」の状態ですが、図表2の通り右側の負債額が左側の資産額を上回っているという状態です。
企業が保有している資産を全部足しても負債を返せないことを示し、財務上のリスクが高い状態と言えます。しかし、(2)では、自社株買いができるほど期間収益はあがっており、資金繰りにも余裕があり、会社の存続には問題がないというケースです。
次に、なぜ自社株買いでこのようなことが起こるかを説明します。
例えば、A社の株式が帳簿上では1株1ドルで計上されており、株式上場後に成長したことで株式市場では1株10ドルで評価されているとしましょう。
仮に発行済株式数の1%が自社株買いで買い戻された場合、株主資本は10%減ることになります。それが積み重なって10%の株式が買い戻されたときには、株主資本がゼロになっていたり、株価によってはマイナスにもなりうるということです。これが自社株買いが要因で債務超過になる仕組みです。
しかし、ここでなぜ債務超過になるまで自社株買いをするのかという疑問がわきます。
もちろん、これは株価上昇を期待する株主がそれを歓迎するからですが、どんな企業でもできるというものではありません。業績が安定していて、信頼度の高いキャッシュフローが期待できる企業にのみ可能と考えられます。
次段でその実例をみてみましょう。図表2:「債務超過」とはどんな状態か
優良企業のみに許される「自社株買いで債務超過」
「自社株買いで債務超過」になった典型的な例として、自動車部品販売のオートゾーン(日本のオートバックスにあたる会社です)のケースを見てみましょう。
図表3は同社の株主資本、負債、発行済株式の推移を示しています。継続的な自社株買いにより発行済株式が減少、これに伴って株主資本も減少、09年からはマイナスに転じ、一方で負債は一貫して増加してきたことが分かります。
15年末の負債額98億ドルの内訳は、買掛金が39%、長期負債(ほとんどが債券発行によります)が49%を占め、同社の取引先(販売部品の納入企業)と債券投資家が株主に代って同社の資本を賄っている形です。
つまり、「自社株買いで債務超過」が成立するためには、「この会社は債務超過になって財務リスクは高いが、安定的なキャッシュフローが期待できるので、同社に対する債権や同社が発行した債券をもっていても大丈夫だ」と判断する、事業内容を熟知した取引先と債券投資家の存在が不可欠と言えるでしょう。
ですから、「自社株買いで債務超過」となっている企業には、盤石な事業基盤を有して、安定的なキャッシュフローが期待できる優良企業が多いはずだと考えられます。
もちろん、株式の投資家にとっては、会社が安定的に株式を買い戻すことで株式需給が締まることが期待できますし、発行済株式の減少は1株当たり利益(EPS)の押上げ要因となるため、投資対象として注目できる企業だと言えるでしょう。
そこで、このような企業をS&P1500指数に採用されている1,500社から以下の条件で抽出しています(図表4)。
【スクリーニングの条件】
・直近期末の1株当たり純資産がマイナス(株主資本がマイナス)
・信用格付けが「BBB-」以上
・直近会計年度中に発行済株式数が減少
・今期予想売上高が増加見込み
抽出された7銘柄の株価推移をみると、オートゾーン、ガートナー、ドミノピザなど長期に株価上昇が継続していて注目できるでしょう(図表5)。事業内容から中長期の成長性が高いと考えられる5銘柄を選んでご紹介いたします。図表3:オートゾーンが債務超過になった経過
図表4:「自社株買いで債務超過」企業をリストアップ
図表5:リストアップ企業(図表4)の株価推移(06年~、月足)
注:最後のデータは9/12です。
注目銘柄のご紹介
業種:レストラン
決算期
売上高(億ドル)
(前年比)
純利益(億ドル)
(前年比)
EPS(ドル)
16.12予
24.0
8%
2.07
5%
4.13
17.12予
26.0
9%
2.39
16%
4.93
株価(9/13):149.66ドル
予想PER(16.12期):36.2倍
- ヤムブランズ(YUM)傘下のピザハットに次ぐピザレストランチェーンで世界2位の会社です。米国内に384店を自社運営するほか、フランチャイズ店が4,186店あり、海外はすべてフランチャイズにより80ヵ国以上で7,330店を展開しています(15年末)。営業利益は、自社運営店舗が14%、フランチャイズ先へのピザ生地や厨房機器などの供給が22%、フランチャイズ先からのロイヤルティ収入などが64%を占めています(15年12月期)。主要なフランチャイジーとして、オーストラリア市場に上場するドミノ・ピザ・エンタープライゼス社があり、日本事業は同社が運営しています。
- 同社の強みとして、国際的によく知られたブランド、独自開発のネット注文システム、費用効率の高い店舗フォーマットなどが挙げられます。4-6月期は売上・営業利益とも前年同期比12%増、既存店売上は米国店舗が9.7%増、海外店舗が7.1%増と好調です。米国の既存店売上のプラスは21四半期連続、海外は90四半期連続です。
- PERは質の高い成長を長期に遂げていることを反映して高い水準にあります。株式市場の調整局面などでの投資を検討してみてはいかがでしょうか。
業種:自動車部品販売
決算期
売上高(億ドル)
(前年比)
純利益(億ドル)
(前年比)
EPS(ドル)
16.8予
106.7
5%
12.43
7%
40.74
17.8予
111.8
5%
13.17
6%
45.55
株価(9/13):744.15ドル
予想PER(17.8期):16.3倍
- 自動車用品販売チェーンの最大手で、日本のオートバックスにあたる会社です。米国で5,141店のほか、メキシコ442店、ブラジル8店を展開しています(16年2月末)。
- 店舗網の拡大による安定成長に定評があり、積極的な自社株買いもあって、株価は長期的に大幅な上昇を遂げています。自動車修理工場などプロ向けの拡大、物流の強化による売れ筋の品揃え、国際展開などの売上拡大戦略が奏功しています。また、米国での車齢の上昇やガソリン価格低下による走行距離の伸びなど、事業環境も追い風となっているようです。
- 16年3-5月期決算は、売上が前年同期比4%増、既存店売上が同2%増、EPSが同13%増と堅調です。16年6-8月期決算は来週9/22の発表予定です。
業種:調査
決算期
売上高(億ドル)
(前年比)
純利益(億ドル)
(前年比)
EPS(ドル)
16.12予
24.4
13%
2.29
18%
2.76
17.12予
27.1
11%
2.59
13%
3.14
株価(9/13):89.19ドル
予想PER(16.12期):32.3倍
- 1979年創業のIT分野の調査・助言をグローバルに展開する会社です。1,100名超のアナリストおよび600名超のコンサルタントを擁し、大手企業および政府機関のIT部門責任者、テクノロジー企業、通信サービス企業、投資会社など1万社以上を顧客としています。15年の売上構成は、調査73%、コンサルティング15%、イベント12%で、粗利率は調査が69%で最も高くなっています。
- 世の中でIT分野の果たす役割が大きくなる中、ITリサーチ業界で最大手(同業には、フォレスター・リサーチ、IDC、IHSなどがあります)のポジションを生かして安定的な成長を遂げています。売上の約4割が海外であるため、ドル高の影響を受けて14年、15年の純利益は停滞しましたが、14年に5%、15年に6%の株式を買戻して、EPSは安定的な増加となっています。
- 4-6月期の売上はリサーチが牽引して11%増、営業利益は2%減ですが、買収費用・のれんの償却等を除いた調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)では7%増と堅調です。16年12月期の会社ガイダンスは買収効果もあって売上は前年比11-14%増、営業利益は同8-18%増を見込んでいます。
業種:ホテル
決算期
売上高(億ドル)
(前年比)
純利益(億ドル)
(前年比)
EPS(ドル)
16.12予
155.64
7%
10.94
27%
3.67
17.12予
168.12
8%
11.40
4%
4.16
株価(9/13):68.41ドル
予想PER(16.12期):18.6倍
- ホテルの運営、フランチャイズ、ライセンスを主力事業とする会社で、15年末に4,424施設、約76万室を運営しています。部屋数による所有構造は、フランチャイズ57%、運営契約40%、合弁2%、所有・リース1%となっています。主要ブランドに、「マリオット」「コートヤード・マリオット」「ルネサンス」「ザ・リッツ・カールトン」などがあります。
- ホテル建物の所有者からホテルの運営を請け負うのが主力事業でホテル資産は保有しないため、事業拡大に伴って資産が重くなるというような心配がないところが同社のビジネスモデルの美点です。資産の保有が重要でなく、人のマネージメントが主要な業務であるため、自社株買いを積極的にできるということに繋がっています。
- 4-6月期決算は売上が6%増、営業利益が9%増、北米のRevPAR(販売可能客室あたり売上)は3.2%増、海外のRevPARは2.9%増(為替の影響を除くベース)で堅調でした。現在、「ウェスティン」「シェラトン」などの高級ホテルを運営するスターウッドホテル&リゾートを買収予定で、当局の審査を待っています。
業種:住宅設備機器
決算期
売上高(億ドル)
(前年比)
純利益(億ドル)
(前年比)
EPS(ドル)
16.12予
74.3
4%
5.18
45%
1.56
17.12予
78.3
5%
6.13
18%
1.92
株価(9/13):33.03ドル
予想PER(16.12期):21.2倍
- 米国最大の住宅設備機器メーカーで、水栓(Delta、Hansgrohe、Brass Craft、Watkinsなど)、キャビネット、窓枠などの有力ブランドを保有しています。最大の販売先はホームデポで、売上の3割弱を占めます。
- 住宅設備機器の各分野で有力ブランドを保有することから、人口増で住宅需要が増える米市場にあって安定的な成長が期待できると考えられます。15年には断熱材などの部門をスピンアウトすることで、米国の住宅市場循環による影響を引き下げています。
- 主力の水栓部門が牽引して4-6月期の売上は4%増、営業利益は20%と好調です。水栓部門は主力4ブランドすべてが四半期売上の最高を記録、米国および海外ともにシェアが拡大しています。部門売上は9%増、営業利益は39%増です。
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このレポートに深く考えさせられる。ソフトバンクのようにレバレッジ経営はあるが、債務超過になってまで、自社株買いのだ。
どこやらのピザやさんや、保険金不払いで問題になっている外資系保険会社も、資金を世界中から集め、それを米国の自社株買いを行うことで、株価を上げ、株主に還元している。
でも、株主のために会社はあるのだろうか。
ピザ屋さんもブラック企業で有名だし、保険会社も営業が悪質なところもある。そして、保険金の不払いにもつながっているのかもしれない。
かといって、労働者を手厚い保護のもとにして、破たんした企業も数知れず、米国の航空会社は、株主の多数が労働組合であったため、リストラができず破たんしたところもある。
エンロンのように、従業員に株を買わせるDC(確定拠出型年金)で破たんして老後資金がパーということもあった。もちろん、業績の向上が株価の向上につながるとなるのであれば、従業員に奨励金を出し、自社株持ち株を推奨するの日本の企業も多い。
破たんすれば、従業員は資産も収入も失うが。
一方で、労働者を軽く見て、長時間労働やパワハラ、賃金の不払い、非正規雇用の首切りなど、ブラック企業は近年の問題になっている。
会社は労働者のためにあるのかといったら、そうでもない。うーん悩ましい。